かぎゅう
主人の長寿の祝いに、蝸牛(カタツムリ)を取ってこいと命じられた太郎冠者。ところが、太郎冠者はカタツムリがどういうものか知らない。
薮へ入って探すうちに、昼寝をしている山伏をカタツムリと勘違いして声を掛ける。
すっかり山伏をカタツムリと思い込んだ太郎冠者は、山伏の言うままに囃子物に夢中になる。そこへ帰りが遅いことを不審に思った主人が迎えに来るが、主人もやがて囃子物に釣り込まれてしまい・・・
【蝸牛】と書いて「かぎゅう」と発音するが、作中ではカタツムリと言っている。
主人から教えられたキーワード「頭が黒い」「腰に貝をつけ」「折々は角を出す」という特徴が悉く山伏に当てはまってしまい、「大きいは人ほどもある」と納得してしまう。
囃子物の文句は「雨も風も吹かズに」や「出ザかまうち破ろう」など、いくつかバリエーションがあるが、当家は「雨も風も吹かぬに、出なかまうちわろう」と発音する。循環するリズムに周囲もいつの間にか引き込まれてしまう。狂言に登場する山伏は悉く失敗する中で、本曲は幕入りまで揃って囃子に打ち興じる演出がある。定石通りに主人達が我に返り、追い込んで行く演出もあるが、長寿や祝賀の場で演じられる事も多い事から、前者の演出が多く採用される。