かずもう
夏の枕元の蚊。耳元をドップラー効果で上下する羽音に無視するもならず、捕まえることもならず・・・鬱陶しいことこの上ありません。この蚊を擬人化して、人間と相撲を取らせる狂言です。相撲をとるならば裸。裸ならば血を吸いやすかろうという発想でしょうか。古き人はよくこんな発想を持ったものです。
蚊の精に用いる面を「嘯吹(うそふき)」と言います。ウソツキではありません。うそふき、です。「ひょっとこ」という面は皆様もよくご存知だと思います。「火吹き男」が語源だそうです。つまり、昔のかまどや風呂の火をおこそうと息を吹きかけている表情を写したものだそうですが、うそふきも「嘯」つまり口笛を吹いているところ。息を吹いているところは同じですね。これをうまく利用して、想像上の蚊の特徴をうまく表現しています。後半にはクチバシが少し長くなります。やはり古人はよく考えたものです。
能、狂言の世界では「白」神聖は神聖な色であると共に裸を表します。相撲を取ることになった大名は素襖、小袖を脱ぎ捨てて白練に下袴姿になります。季節柄、夏によく出る曲ですが暑さが身にこたえます。