くさびら
屋敷の庭に菌(キノコ)が生えて困っている男。抜いても抜いても、翌日にはまた生えてくる始末。途方に暮れる男は山伏のもとを訪ね、菌封じの祈祷を頼む。引き受けた山伏は屋敷へ出向き、さっそく祈祷を始めるが、効果がなくて逆にどんどん増えて追い込まれる。
菌の挙動、山伏の困惑・狼狽ぶりが笑いを誘うシンプルに楽しい演目だが、これは人間と自然との共生がテーマとも、コロナ禍のアンチテーゼともとれる見どころの多い演目である。
子どもたちが主に挑戦する菌役は、静と動の型(動き)を繰り返す役で、見た目よりかなり体力が必要である。普段では経験できない声の出し方、決まった動きを体験してもらうことによって、学校の授業では習得することが難しい、精神的・肉体的成長や人前で自己を表現する体験、世代間交流がはかれ、これからの地域の古典芸能普及インフラの一助となりうると思われる。
(2022「夏やすみ!おやこで狂言会」解説文より 文・M)