すえひろがり
末広がり
「末広かり」と書いて「すえひろがり」と読みます。「末廣かり」とも書きます。末広がりとは、扇のことです。先へいくほどひろがっていることから、縁起物とし珍重されました。
さる果報者が一族の人々歓待しようと、太郎冠者に都へ上って引き出物にする末広がりを求めてくるように言いつけます。ところが太郎冠者は都へ上る嬉しさのあまり、末広がりがどのようなものか、どこで売っているものかも知らずに飛んで行ってしまいます。都に着いたところでハタと気付いた太郎冠者は、都の物売りを真似て声を張り上げて歩きます。
それを聞きつけた都人は、太郎冠者が末広がりを知らないのをいいことに一儲けしようと企み、古い傘を言葉巧みに売りつけます。太郎冠者はそれを持って喜び勇んで帰りますが、果報者は腹を立てて太郎冠者を叩き出します。
ようやく騙されたことに気付いた太郎冠者は、都人に教わった囃子物を思い出して囃し出します。果報者も段々と乗せられ、ついに自ら戸口に立って太郎冠者を招き入れます。
(2007年「四季の狂言会」解説文を加筆・修正)