おばがさけ
毎年酒を造って商売をしている伯母の元へ、タダ酒をねだりに行く甥。
しかし、伯母は今季の売初をしていないと断る。
一計を案じた甥は、最近自分の住む地に鬼が出たと言って伯母を怖がらせ、その後、自らが鬼に変装して伯母を脅し、酒にありつく。しかし、飲みすすむうちに酔い伏してしまい、様子を見に来た伯母に見つけられ追い込まれる。
伯母に「太郎」と呼ばれる甥は、これまでにもあの手この手で伯母の酒をねだって来たらしい。しかし、当時として女性が商売をして自立している人はその辺りはしっかり区別しており、なかなか意のままに振る舞われない酒に太郎は苛立っていたのかも知れない。
念願の酒を前にして最初は用心しながら飲んでいるものの、段々と酔いが回るにつれて大胆になり、遂には高歌放吟して寝入ってしまう。通常は《大江山》を謡う。「・・・鬼とな思しそ」ときてハッと我にかえるのは、辛うじて理性が残っていたのだろう。