2023年10月24日
少し寂しい。
決まり文句ではあるが、終わってしまえばあっという間であった。
半年前、何かとお世話になっている神戸文化ホールO氏から来電。
何かと思えばダンス公演のオファーと。
「え?私ですか?」
ダンスの出演歴が無い訳ではない。
しかしダンスは、10代のころに苦い苦い経験がある。
とにかく体が硬い。そして、カイナから先の細かい振り付けは本業に無いことは以前にも書いた。
そして、何よりリズム感が大変残念なこと。
お受けするまでに、随分逡巡した。
まず、本番当日の夜に薪能の開催が先に決まっていた。終演後に神戸を出て、明石城の開演時間に間に合うか。
これは当日の後の演目に出演することで融通が利いた。
次に、そもそも私でいいのか?
分野違いであり、その道の一線級の共演者と並べば力量は一目瞭然である。悪目立ちしないか?
聞くところによると、今回の演出である岡氏のご指名、招聘ダンサー選定の映像資料に私の舞台映像が混じっていたのが目に留まったとのこと。
我々の業界ではピンとこないが、劇場作品における演出(ディレクター)は作品制作の一役職ではなく、全体を統括するマネージャーのこと。統括マネージャーがそう仰るならば何かお考えがあるのだろうと思い直した。
その折、数年ぶりにJ氏のクラスに出講する事があった。私には未知の世界であったので、講義の帰りに相談してみた。「えーんとちゃいますー」「似合ってはると思いますよー」これでようやく決心がついた。
その帰り道、O氏にお受けする電話をした。
夏いっぱいの稽古期間であったが、稽古が始まったのがついこの間のように思えてくる。
初日には、自分でも呆れ返るような大チョンボで幕が開く。
その後は酷暑の炎天下、自転車で芦屋の稽古場まで伺った。お陰でこんがり焼けた。
案の定、基本動作が覚えられない、ついていけない。
ダンサーの皆さんが楽々ついていかれる動きが、私だけラジオ体操になる。
早速、昔の苦い記憶が甦ってくる。
詰めて通いたくても、夏休みの子供教室が狂言の指導を待ってる。
これ・・・本番までに間に合うんだろうか。
そんな私に、再びO氏から司令(?)が。
プレ公演として演出の岡氏と、死神役の垣尾氏と共に鼎談に出てくれ、と。
『え?私ですか?』
垣尾氏は岡氏と共に初演から出演されているオリジナルメンバーとのこと。
そんなところに新米の私が入って何の役に立ちますのん・・・。
(この辺りの顛末も過去ログを遡ってください)
結局、O氏の取り廻しと、ホストグループであるアンサンブル・ゾネのスタッフの皆さんのご協力でどうにかこうにか・・・。
公演当月に入り、小屋入りという我々には馴染みのない言葉がチラつくころ、会場である神戸文化ホールのリハーサル室で実寸の稽古となった。
コロナ自粛の頃、O氏より朗読劇「チョコレット」再演のお声掛けがあり、初めて足を踏み入れたリハーサル室。
まさか、この「チョコレット』の映像が、今回の「緑のテーブル」に結びつくとは思わなかった。
20年以上神戸文化ホールに出演しているが、リハーサル室に入るのはこれで2度目である。
(リハーサル中、舞台の上手、下手の塩梅で右往左往している様子は過去ログへ)
秋風、吹き始めたと思ったら、いきなり寒風になった。
小屋入り。
何度も場を繰り返し、
やっとフリを覚えかけて(←遅い)
作品の段取りを覚えかけて(←やっぱり遅い)
周りがみえかけたところ(←遅すぎる)
もう、本番の幕が揚がってしまった。