2023年10月02日
金曜日は、おそらく日本で一番新しい城、尼崎城の薪能に出勤した。前身である大物(だいもつ)の薪能は昭和55年より開催との事なので、私と同年である。
上演された【船弁慶】の義経一行は尼崎・大物の浦から船出、とあるのでこの辺りはまさにご当地である。ご当地の演目が上演されると雨が降る、というのは業界では知られた話ではあるが、当夜は秋晴れで火入れの頃に大きな月が顔を出した。
船頭は、一段の天気にて目出とう候、などと言うものだから、なんとなく日中をイメージしていたが、ワキのナノリには、今日夜をこめ、などとある。淀〜大物からの船出にどれだけの時間が経過したのだろうか。もしかしたらこれは夜間航海かも知れない、などということに今更気づいた。
折しも中秋の名月。
見上げた空には月がかかり、気持ちよく勤められた。
もう一点。
シテの中入前に後見のO師の扇が、僅かに閃いたのが目の端に留まった。
あ、何か考えておられるな、と思ったら、シテが幕入した後、残された烏帽子を引くという本来の役目の前に、ステージレベルで見物していたカメムシさん達を見所へ移動させてくださった。おかげでカメムシにしかれー!という必要が無くなり舞台に集中することができた。