一葉の写真

2023年10月16日

善竹忠亮公式Instagramのトップページに使用している写真は、野口英一氏の撮影。昨年、復曲能【鼓之滝】初演の折のものである。

狂言方の舞う舞事である「三段ノ舞」を舞終えた後、謡ガカリになり、有馬の湯に湯治に入るところを自ら謡い舞う。
途中、「盃浮かめて舌鼓」と湯の面に盃を浮かべるところを、能の【安宅】や【融】にある曲水の宴を表現する型をイメージして、しかも、能の様にダイナミックにならない様に(笑)考えてみた。

その結果、その次の句が「鳴るは鼓の滝の水」と、能【安宅】の似た部分を連想させることから能の特別な型に倣って目付柱の付近に扇を滑らせて、それを拾い上げて盃を干す型にした。この様に能を参考にしつつも、少しパロディになるようにする事を「モドク(擬く)」と呼んでいる。

使用した扇は観世流・井戸良祐氏の道成寺初演の際の扇を、大蔵流仕立てでいただいたもの。扇面にあしらわれた桜の柄が今回の桜模様にピッタリと思って使わせていただいた。
終演後「僕の道成寺の扇やな」とご指摘あったので「投げて扱ってスミマセン・・」と申し上げると、「いや、使ってくれて嬉しい」と言っていただいた。

実は、登場直前まで扮装、型の決定を迷いに迷っていた。
幾つかの型の候補があり、どれを選択するか。安全策でいくか、思い切っていくか。
勿論、開場前に舞台上で場を当たり、ある程度は選択肢は絞っていた。野口氏は見所(客席)で機材の準備をなさりながらチラリと場当たりの様子をご覧になったのみ。本番では、私がえい、ままよ!と放った扇を、ほぼ初見でその瞬間を見事に捉えられたのである。見事な腕で撮られた持たれた写真を使わせていただき、大変ありがたく思う。

この様に、沢山の人のご厚意によって舞台が成り立ち、活動ができている。
大変ありがたいことである。

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