2024年06月30日
狂言使われる衣装を「装束」と呼ぶ。
装束は着ると言わず「つける」という。
基本的に自分ではつけない。つけ手が2人、当人の前後から着ける。
装束つけは「折って・まとめて・結ぶ」のが基本的な作業である。
結び方は、舞台上で目立つ部位には飾り結び、すぐに脱ぐ必要のあるものは「仕掛」と呼ばれる結び方をすることもあるが、基本的にはなんの変哲もない蝶結びである。
しかし、これを緩みにくく、解きやすく結ぶのが難しい。
それ以前に難しいのが、締め具合の調節である。
「新聞紙を結んでいるのと違うで」まぁ、新聞紙でなくても無機物であればなんでもいい。
要するに、生身の人間の帯を結んでいるという意味だ。
当人にとってちょうど良い締め具合にする調整には、着け手が「お締り」という合図をかけてから締め始める。当人は自分の良い加減のところで合図をして止める。つけ手が力任せに勢いをつけて締めると人間も装束も傷めてしまう。勢いと力に頼らずゆっくりと締めるにはそれなりの力量が要る。
当人から合図があれば、今度はそれを緩めないように結び留める。
二重掛けにすることもあるが、我が家は限定的にしか用いないので緩まないように留めるにはそれなりの力量が要る。
これが面(オモテ)の紐となるとさらにデリケートだ。
お締まりの前に「お当たり」が加わる。結び目の位置の確認である。締め過ぎは下手をすると命にも関わる。不用意に紐を引けば結び目がズレてしまう。
締めすぎず、緩すぎず、しかるべきところに紐を結び留めるにはそれなりの力量が要る。
このように、結び方ひとつでもそれなりに力量が要る。